海外の移植事情

海外移植を成功させる為に最も重要なことは、ご自分に合う良い腎臓を授かることです。
HLA(組織適合検査)・PRA(既存抗体検査)並び移植手術直前のクロスマッチ検査(リンパ球交差試験)を厳格にして、最良のドナーを移植することが最も重要です。加えて移植を執刀する医師の技術水準の高さと術後の患者様に対するハイレベルなケアー体制の有無にかかっています。特に免疫抑制剤の処方に付いては豊富な臨床データと経験則が肝要となる分野です。
患者様ご本人が海外の病院を探してその医療体制をチェックすることは至難であり、そうそう容易にできる事ではありません。そうなると現実は移植仲介者の知識や説明に頼ることになります。
ではその仲介者は信頼できるのか?社会的信用はどうなのか?と問われると、最も頼れるのは身近にいる主治医であり、その紹介する医療機関となるでしょう。
また、その主治医は信頼に応えるために、最も安全と思われる米国の医療機関を指差すのは必然と言えるでしょう。仮に問題が発生した場合でも、アジア諸国と対比して医療先進国である米国ならば予期せぬ結果になっても患者または遺族とのトラブルは抑制でき、負うリスクは小さくなります。
私どもが考えても充分な資金と時間の余裕がある患者さんでしたら、当然米国行きを勧めます。アジアでの移植を求める方は、資金又は時間のいずれかの悩みを抱えている患者様と言えるでしょう。
ではアジアの医療水準は米国より遥かに遅れているのかと言えば、必ずしもそうではなく、欧米に留学し最新医療を学んだ医師であれば世界トップレベルの技術水準を会得しており、加えて名門大学の付属病院や移植センターともなれば最新の医療設備が整っています。

充分な設備が施された病院で名医の執刀により移植手術を受けるにはどうすれば良いのでしょうか?それはできるだけ多くの情報を収集して、一度は病院に足を運び執刀医の先生と心行くまで対話される事が最も大切なことではないでしょうか。
また移植手術を終えた患者の病室に行き直接話を聞く事が許されている病院もあります。通訳は必要ですが執刀される先生は大概英語が通じます。そして本当に移植する事がご自身にとって幸せなのか十分に考慮し、さらにご家族や主治医の賛同が得られることが理想です。

移植手術は人生最大の決断であり、安易に決められる治療ではありません。健康体になり自由な生活を早く取り戻したいという患者様の痛切な願いが成就できるよう、私どもは今後も可能な限り知りえた情報を提供していきたいと思っています。

帰国後の問題ついて

事務局に

「明日帰国して来るがどの病院にも断られ、受け入れてくれない。助けてほしい」

この様な相談の電話が度々ございます。
国内の病院は海外移植に否定的でまずは快く引き受けて下さる病院を探すのはとても困難な事です。患者様の容態を聞き私どもNPOから病院に電話を架け症状を伝えても、病院の返答は「当院で紹介した病院以外で移植された患者は治療できません」と断ってきます。こちらが何度お願いしてもにべもなく、中には通話中に遠くから「そんな連中に係わるな!」と怒鳴り声が聞こえることもあり、全身から力が抜ける思いになります。
法的には医師に診療義務があります、しかし実態はまったく取り合って頂けないのです。日本の医師が紹介する病院とは大概が米国のメディカルセンターです。その米国でも現在では登録してから3年以上待たなければ手術ができず、しかも生着率の低い死体腎移植が中心です。
加えて移植費用も3000万前後になりその負担ができる患者ばかりではないことも分ってほしいと思います。

帰国後の病院探し

私どもNPOからのアドバイスとしては事前に病院に問い合わせるとほとんど断られます。
少々大変な事ですが二、三の病院で断られる事を承知の上で患者本人が直接病院に行かれることです。さすがに患者を前にして拒否されることは少ないようですが長時間またされることは覚悟しなければなりません。
とても残念な事ですがこれも現実です。このホームページをみて医療関係の方でどなたか患者の引き受けに付いて理解して下さる方は是非ともご連絡を下さい。

フィリピンを訪問して

本題に入る前に私どもNPOの思想は死者と共に埋葬される貴重な臓器を、病気で苦しむ患者に移植する事により人命が救えるとの考えが根底にあります。身内以外の健康体の人間から臓器を摘出する事は基本的には支持していません。
私どもに相談に来られた腎不全の患者の治療方針に付いて主治医の先生と検討を重ねた結果、生体移植の方が適している又はそうでなければ長期間の生着が望めない患者が発生したので、より良い移植治療を施すために私どもNPOは本年8月に1週間の日程でフィリピンの病院を訪問する事にしました。医療施設および医師の技量レベル・執刀経験など12項目に付いて調査した結果、移植医療に適した病院が三か所確認できました。
医療環境に不備はありません。しかし、ドナーの手配について大きな問題が生じました。皆様もご承知と思いますが、現地では金銭による臓器売買が一般的です。私どもは渡航前に「腎臓を売って家を建てたり子供を大学に行かせる」と、聞いていました。ドナー提供者にも大きな恩恵があり腎臓を一つ無くす代償として将来が得られるバランスがあるものと考えていました。しかし現実は大きくかけ離れており貧民から搾取同然で摘出されているのが現実です。
宿泊したホテル周囲の裏路地では昼夜を問わず、路上にダンボールを敷いて大人も子供も大勢寝ています。臓器提供者はこの人達です。満足な説明もしないで目先のわずかな現金で「いい仕事が有る」と騙して臓器を取るのです。当然アフターケアなどありません。臓器ブローカーはドナー(臓器の提供者)に対して人間の扱いをしていないのです。これにはさすがに患者を救う目的があったとしても、ためらいを覚えました。また、日本人の仲介業者が莫大な利益を得ている事も分かりました。
現地の病院関係者から誘いはありましたが、臓器提供者と患者の双方が幸福になれる仕組みがない限り進められないとお断りしました。また帰国後に患者の方にも現地の状況を説明して納得して頂き、他の治療法方を模索する事になりました。
医学的には腎機能は一つでも通常の生活に耐えられるので、フィリピンの貧しい社会に生きる路上生活者がライフスタイルを変える手段として腎臓を提供することで文化的生活を迎えられるなら、提供者も患者の方も双方が幸福への道になり得るかとも思えますが、現実は程遠い話と思いました。双方が5年後に出会った時にお互いから「あなたのお陰で私は幸せです」と言えなければ臓器売買は成立できないと、私どもNPOは考えます。

内閣府認定NPO法人・難病患者支援の会 より